教師と社会⑥「教員採用試験の倍率低下と政策」教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.16

「小学校教員倍率、過去最低2.7倍 質の確保急務」の本質

「小学校教員倍率、過去最低2.7倍 質の確保急務」


日本経済新聞 2021年2月2日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG019280R00C21A2000000/

2021年2月にこのような見出しの記事が出された。
そこでは、萩生田文部科学大臣による「教師の人材確保と質向上の両面から、教師の養成や採用などの制度について検討を進める必要がある」という言葉が紹介された。
また、小学校で「児童それぞれにきめ細かい指導をしやすくする目的」で2021年度から5年かけて、すべての学年で「35人学級」に移行するということや、「小中の教員免許を両方取得する場合に必要となる教職課程の単位数を減らす」ということが述べられ、「小学校教員になりやすい環境を整える」と報道された。
不人気の教員採用をなんとかして増やそうとする工夫だと思うが、これは「教師の人材確保と質向上の両面」という観点では本質と逆行してはいないだろうか。
まるで学力の「貧困由来説」と同様だ。
アメリカのジャーナリスト、アマンダ・リプリーは学力の貧困由来説を、「直感的にはわかりやすい」とアイロニカルに述べた(アマンダ・リプリー 2014「世界教育戦争」 中央公論新社 p.14)


同じように、「教員採用試験の倍率低下は教員の質の低下を招く」というロジックは直感的にはわかりやすい。
そこには、教員採用試験の低倍率は、「誰でも合格しやすい」状況が生まれ、学力が低くとも、あるいは教育への情熱、使命感が不足している学生でも合格することができ、教員の質が低下する、というロジックが存在するのだろう。
ではそのロジックに、どの程度のエビデンスがあるのだろう。

「35人学級」にする意図としては、学級のキャパシティを減らし、教員の「仕事量」を減らすことが主たる目的である。
これは単純に、1学級の児童数が5人減るというだけではない。
たとえば1学年の児童数が79人の学年があったとしよう。
これまでの40人学級であれば、40人のクラスと39人のクラスの2クラスであった。
しかし35人学級になると、71人以上は3クラスとなるため、79人の隔年は3クラスで編成される。
したがって、この学年は26人、26人、27人の3クラス編成となる。
39人の担任は26人の担任となり、「5人減る」のではなく「13人減る」のである。
これで担任の労働量を大きく減じることができる。
日常的なテストの採点や成績評価、ドリルなどの「丸つけ」の業務が大きく減少する。
しかしそれだけではない、1クラスに13人の児童が減れば、それだけ「トラブルの可能性」が減じると言える。
児童間の揉め事や保護者からのクレームなど、現在の教員に重くのしかかっている、不可抗力な範疇での業務が減じる可能性が高いのである。
しかし、それを「きめ細かい指導を可能とするため」という言葉に置き換えると話は違ってくるだろう。

(次回に続く)

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