不登校のWell-Being
6. イノベーティブ・フリースクールの誕生

私が勤める大学のサークルとして、”innovative Free School SALA”が誕生した。

このフリースクールは、革新的で、研究的で、実験的なものだ。

私は不登校に関する研究を進めていく中で、どうしても自分が考えるようなフリースクールを創りたいと考えていた。

実際に、エリア選択や不動産、広報にまで手を伸ばしていた。
しかしそのような時にある論文に出会った。
その研究は私にとって幾分、衝撃的なものだった。

その研究は、「わが子の不登校」を経験した親に焦点をあてた研究(金, 玉禮,2015)である。
そこでは、調査対象とした母親24名のうち、ひとり親が9名、ふたり親が15名と分類されていた。
24名という調査対象数は少ないと言えるが、それでも4割近くがひとり親世帯であるという実態が浮かび上がる。
さらには、24名の母親の健康状態について、7名が「うつ病」、5名が何らかの疾患を抱えており、健康状態にまるをつけている母親は12名で、半数がうつ病を始めとする疾患を抱えていることがわかる。

そして、ひとり親の9名中、うつ病が4名、心疾患が1名という実態が示されていた。
また、同時に要介護の親をもつ家庭も複数存在し、このような実態を当研究では「重なる不利」と称している。

一方で、フリースクールに通うには費用がかかる。
前回述べたように、フリースクールにかかる費用は月謝が平均で3万円程度とされるが、入学金や月々の諸費用を考え得ると、月平均5万円程度は必要だろう。

現在、25万人程度とされる不登校児童生徒の家庭で、ひとり親世帯、要介護、疾患などの「重なる不利」を抱える家庭は「非常に多い」と考えられ、不登校のわが子をフリースクールに通わせることができない家庭が多く存在することは容易に計り知れる。

だから、フリースクール事業は発展的に展開することができず、全国でいまだに500施設ほどに止まるという実態につながっているといえるだろう。

そこで考られることは、「無料のフリースクール」である。
フリースクールは、いわゆる「学校」(一条校)ではないため、国からの補助金はない。
したがって、民間のフリースクールは「自己経営」が必要であり、無料にすることは困難である。

そこで考えたのが、大学でサークルとしてフリースクールを展開することだった。

サークルとして申請すれば大学の施設を無料で利用でき、何よりも私の周りには、不登校問題に関心を持つ教育学を学ぶ学生が多くいた。
彼らは将来、教師を目指して勉強しながらも、私のこの提案に飛びついてくれた。

なぜなら、教師を志す学生というものは、子供が好きで教育というものに携わろうとする資質をもっている。
だから、不登校問題に対して大きな関心をもっている。
25万人の子供たちを置き去りにしてはいけない、と本気で思える資質をもっている。

そして私たちは、9人の学生たちとSALAをスタートさせた。

これから、学生たちが展開するSALAの物語を紹介していこう。

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