不登校のWell-Being
2. 不登校と”命“

最近のニュース(2023年3月)で、2022年度の自殺者数が2万1881人となり、前年比4.2%の増加だったと発表された。

そして小中高生の自殺者数は514人で、1980年以降(統計史上)最多であったことが報告された。
その数は小学生が17人、中学生が143人、そして高校生が354人ということである。

これだけの子供たちの自殺者が存在するということは、今、現在の日本社会、そして学校社会において子供たちが、Well-Being(身体的、精神的、そして社会的にも健康=幸福である状態)を得ることが困難であることを実証していると言えるだろう。

世界の中における日本の自殺者について概観すると、15〜24歳の自殺者数はOECD加盟国中、男性は9番目、女性は7番目に多い(WHO,2019)。

しかしこのことについて、「年齢階級別自殺率」の資料を見たとき、10〜14歳、15〜19歳ともにOECD加盟国中2番目に多いことがわかる。

19歳までの自殺(1006人)の原因・動機の割合を示すと以下のようになる。

「家庭問題」6.5% 166人
「健康問題」22% 222人
「経済・生活問題」2.4% 25人
「勤務問題」4.4% 45人
「交際問題」7.9% 80人
「学校問題」35.2% 354人
「その他」11.3% 114人

(令和4年中における自殺の状況「年齢別、原因・動機別自殺者数」厚生労働省、2023)

以上から、19歳までの自殺者の原因・動機として「学校問題」がもっとも大きな比重を占めていることがわかる。

また、「学校問題」の詳細については”学業不振”が29.3%でもっとも多く、ついで”進路に関する悩み(入試以外)”が23.7%、”学友との不和(いじめ以外)”が17.2%を占めた。
そのほかには”教師との人間関係”、”いじめ”などがある。

これら「学校問題」の要因は複合的に作用して動機となっていると考えた方がいいだろう。

いずれにしても、19歳までの子供たちにとって、「学校問題」が、人生においていかに大きなウェイトを占めているのか、改めて認識しておく必要がある。

学校は、将来を創り出す場所でもあれば、将来を閉ざす可能性のある場所だということである。

この青少年の自殺者数と「不登校」は関連づけて考える必要がある。
しかし、19歳までの自殺者1009人のうち、何人が「不登校状態」にあったのか、統計的にはどこにも表されていない。

学校教員も、社会も、当然のことながら「学校問題」が原因・動機となって自殺する児童生徒を見たくはない。

そこで大きな課題となってくるのが、

学校、あるいは教師は不登校の児童生徒の「状態」をどこまで把握しているのか。

ということである。

ある公立小学校の校長先生と話ていたとき、
「この学校では何人くらいの不登校児童がいますか」
という質問をした。
すると校長先生は、すぐに教頭先生などに聞いて、正確な人数を教えてくれた。
そして私は、
「その子供たちは、毎日どのように過ごしているのですか?市の教室やフリースクールに行っているのか、別室登校なのか、自宅にいるのか」
と質問した。
すると校長先生は、
「うーん、ひとりひとりはそこまで把握していませんね」
と答えた。

これがひとつの実態である。

私が話したある教師は、不登校児童の原因は明らかに家庭にあると言った。

「学校においでよ、といろんな工夫をして待っていても、親が行かなくていいと言う。親がちゃんとしてくれないと」

ここまでのストーリーで、学校が不登校児童生徒の動向や状態を把握していない中で「学校問題」が自殺の大きな原因・動機になっている、というロジックを作りたいのではない。

ここで明確になるロジックは、

「学校」は児童生徒の自殺の原因・動機になっている。
不登校と自殺の関連は、統計上明確になっていない。
「学校問題」から自らを守ろうとして生じる不登校状態は、自殺との関連が示唆される。

ということだ。
重要なのは、自殺と不登校の関連を明確にすることと、不登校の児童生徒のWell-Beingを考え、実践することにほかならない。

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