「不登校と友人関係における同質性」 教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.61

前回(No.60)では、不登校の要因について、とくに小学校、中学校ともにもっとも多くを示した「無気力、不安」について考えた。
もう少し、不登校の要因について考えていこう。

小中学生別で見る不登校の要因

不登校を学年別で見ると以下のようになる。

「R2児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」p16

ここからは、小学生に比べて中学生が、不登校の問題を多く抱えている様相が歴然と見られる。
前回(No.60)記述した不登校要因の内訳(多い順)を合わせて見ていこう。

ふたつの円グラフを比較すると、小学生にとって課題となっていること、中学生にとって課題となっていることがそれぞれ見えてくる。
まず、2番目に多い要因を見てみよう。
小学生は「親子の関わり方」であり、中学生は「いじめを除く友人関係をめぐる問題」となっている。

小学生の「親子をめぐる問題」とはなんだろう?
いくつかの論文をあたってみてわかりやすかったのは、「家庭内緊張・不安」という説明だった(松井、室賀、2004)。

その内訳は「両親の不和,母子家庭,父子家庭」「両親と祖父母の不和」「経済的生活苦」「家族の中に病人を抱えている場合」となっている。
近年では、ヤング・ケアラーという問題も深刻化の様相を見せている。
また、コロナ禍の影響で家庭内緊張、不安の問題はもっと顕在化するかもしれない。
不登校要因としてのこの項目(親子をめぐる問題)については、注視する必要があるだろう。

一方、中学生の2番目の要因「いじめを除く友人関係をめぐる問題」について考えてみよう。
ちなみに、不登校要因としての「いじめ」は、小学生では0.3%(14項目中12番目)、中学生では0.2%(14項目中14番目)であり、不登校の要因としてはとても低くなっている。

友人関係や学級における「同質性」という課題

中学生の友人関係に潜むものは、とても繊細で微妙なものがあることは言うまでもなく、また、誰もが実感してきたことなのではないだろうか。
岡田(2002)では、中学生の代表的なストレッサーは「学業」と「友人関係」であるとし、中学生の友人関係は「互いの内面を開示することなく、傷つけあうことがないよう、表面的に円滑な関係をとるような」ものであると指摘している。
これが「緊張感」だろう。
また、高坂(2010)は、中学生の友人関係の中には「異質な存在にみられることに対する不安(被異質視不安)」や、「異質な存在を拒否する傾向(異質拒否傾向)」が潜むと指摘している。
これが「不安」であると言えるだろう。

学校では、友人関係が「円滑」であることが望まれ、「仲良く」するために教師はさまざまな工夫を凝らす。
たとえば「学級あそび」というものがある。
週に1回、学級全体で昼休みにみんなで一つの遊びをする。
よくあるのが、「大縄跳び」や「ドッジボール」だろうか。
この遊びを決めるために学級会を開き、みんなであそびを投票したりして決める。

この「学級あそび」の目的は、日頃1人でいる子供が、学級という社会の中で孤独化しないようにという教師の思いであり、また、学校でよくいう「集団づくり」の一環なのだろう。

だが、じつはこの時点で、「同調集団づくり」が始まっているのではないだろうか。
異質なものをできる限り排除し、同質性を高めようとすることは、同調の圧力を高める。
昼休みにひとり静かに本を読むことを望む子供がいる。
あるいは集団でいることが苦手な子供もいるだろう。
学級会やホームルームで、全体的な流れとは違うことを発言することが躊躇われる同質性が、学校には存在する。
じつはこのストレスが、不登校の一つの要因であるかもしれない。

学校や教師のイノベーションのきっかけは、見えにくいが至る所の「当たり前」に潜在している。

Follow me!