「学校安全の教訓を伝承し、次代の命へとつなぐ学校危機マネジメント」 〜日本安全教育学会第24回奈良大会を終えて〜①

 2023年9月9日ー10日の2日間、私が勤務する大学を会場に、年次学会長として日本安全教育学会第24回奈良大会が開催され、多くの協力を得て盛会に終えることができた。

 思い返してみると、私が初めてこの学会に所属し、発表したのは2008年の第10回大会で、東京の町田市にある玉川大学での学会大会だった。
 当時の私はまだ大学教員でもなく、研究者でもなく、大阪教育大学附属池田小学校に勤務する小学校教員だった。
 ちょうど、日本で初めてとなる「安全科」の創設に関わり、最初の「安全科」チーフとして授業開発、実践、カリキュラム開発に取り組んでいるときだった(翌2009年、「安全科」発足)。

 初めての学会発表は「小学校におけるAEDを用いた『命の教育』の有効性に関する実証的研究」というタイトルだった。
 いま思い返すと研究とも言えないような、本当に拙い発表だったが、発表の質疑応答の中で、某大学教授が、

「とても貴重な実践をされていますね。今後も期待しています」

と言ってくれ、大いに勇気を得た。

それ以来、ほぼ毎年、自身のルーティンとしてこの学会で拙い発表を継続してきた。

それから15年。
まさか自分が年次学会長に任命され、学会大会を運営するとは思ってもいなかったが、継続的な研究の成果が認められたものと、とても光栄に思い、なんとか成功させたいと数人の仲間と共に準備を進めてきたのだった。

2022年の8月に、第24回奈良大会のテーマを理事会(オンライン)で発表した。
そのテーマとは、

「学校安全の教訓を伝承し、次代の命へとつなぐ学校危機マネジメント」

というものだった。

このテーマには幾つかのキーワードと、それに伴う「思い」があった。

まず、「教訓の伝承」である。

大阪教育大学附属池田小学校で、事件の教訓を伝承しながら学校安全の推進を進めてきたつもりだったが、今もなお、連れ去り、学校への不審者侵入、事故で子供たちの安全、命は脅かされている。

失われた命が遺してくれた教訓は貴重だ。
その教訓を、私たちは「次代の命へとつなぐ」ことができているのか。

そのような、学校安全、子供の命をテーマに研究するものとしての忸怩たる思いから、このキーワードは生まれている。

「学校安全」ではなく「学校危機」というワードを用いたのも、研究者としての「啓発」の思いがあった。
「学校危機」は継続し、容易には解決しないことを、あまり認識されていなし。
たとえば2011年の東日本大震災における「大川小学校津波事故」や、2001年の大阪教育大学附属池田小学校事件における学校危機が顕著な例として挙げられる。
これらについては本ブログで述べてきているので参照してほしい。

このような思いや研究の実態から設定したテーマで開催された学会で、どのようなセッション、シンポジウムが展開され、どのような議論が起きたのか、紹介して行きたい。
(次回へ)

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