教師と社会⑧「日本型学校教育の成果」教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.18
「令和の日本型学校教育を担う教師」とは
前回の投稿(7月20日「教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか」N0.17)で話題にした、小学校で「児童それぞれにきめ細かい指導をしやすくする目的」で2021年度から5年かけて、すべての学年で「35人学級」に移行する等の方策は、2021年2月に文部科学省から出された「『令和の日本型学校教育を担う教師の人材確保・質向上プラン」の一つである。
まず、「令和の日本型学校教育」(以下、本答申)とは何か、その総論を見ておこう。
本答申の副題として「~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」が挙げられている。
本答申は「急激に変化する時代」が背景にある。
その背景にあるものとは「society5.0」時代と、「新型コロナウイルス」の到来であることは言うまでもない。
society5.0時代の到来は、これまでの学力の基盤となるものが根本的に変化していく。
産業の在り方が変わり、求められる学力や資質能力は変容する。
新型コロナウイルスの到来は、学校教育を大きく変化させるかもしれない。
オンライン学習による授業形態の変化、学校行事の内容や方法の見直し、学校というものの存在意義の変化、そしてそれらに伴う、教師に求められる資質の変化などが考えられる。
本答申では、まずこれまでの「日本型学校教育」の成果と課題について総括している。
要約すると、これまでの成果としては、
①日本の場合、学校、教師が学習指導のみならず、生徒指導においても主要な役割を担い、諸外国から高い評価を得てきた。
②また、コロナ禍における臨時休校措置により、学校の役割(必要性)が再認識された
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)【概要】
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985_00002.htm
ということである。
これは本答申の【概要】に書かれていることなのだが、これでは何が「成果」なのかよくわからない。
そこで「本答申」の詳細【本文】を見てみよう。
まず①についてだが、
「こうした制度の下、学校が学習指導のみならず、生徒指導等の面でも主要な役割を担い、様々な場面を通じて、子供たちの状況を総合的に把握して教師が指導を行うことで、子供たちの知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」は、全ての子供たちに一定水準の教育を保障する平等性の面、全人教育という面などについて諸外国から高く評価されている」
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して ~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと, 協働的な学びの実現~(答申) 【本文】
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985_00002.htm
とある。その根拠として、OECD「Education Policy Review of Japan」 や、あるいはOECD「国際成人力調査(Programme for the International Assessment of Adult
Competencies:PIAAC)」 における調査で、日本はOECD加盟国の中でも成績はトップクラスであり、「日本の教育が成功 を収めている要素として,子供たちに対し,学校給食や課外活動などの広範囲にわたる 全人的な教育を提供している点が指摘されている 」とされている。
たしかにこれまで、「日本型学校教育」はある部分では国際的に評価されてきた。
たとえばOECDのPISAでは、科学的リテラシーにおいて日本は常に上位に位置している(ただし、履修した知識の再現力は高いが、その知識を未知の領域に活用する力は芳しくない)。
また、国際的に見て日本の教員の能力は高く、また報酬も高水準である。
日本の教員は一斉講義型授業でもうまくコントロールして成立させることができ、加えて児童生徒の生活面の指導も行う。
そして子供が帰宅すれば次は保護者対応を行う。
(ただし、これは一般論とイメージであり、このイメージの仕事内容に対して日本の教師が満足しているかといえば、そうではないだろう。このことについては、次章でOECDによる国際教員指導環境調査TALIS2018を整理、分析して探ってみよう)。
(次回へと続く)
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