「コロナ禍の新任教師たち」① 教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.6
緊急事態宣言下で教師生活をスタートしたゼミ生たち
2020年4月は、ぼくのゼミ生5名が教員採用試験に合格し、晴れて教師として各地に赴任していった。ところが、これまでの新任教師とは大きく状況が違っていた。
当初は3月から春休みまでとされていた休校要請が4月になっても解除されずにいた。
従来であれば4月1日に、ここが自身の職場なのだと赴任校に行き、そこから怒涛のような日々が始まる。心地よい、そして経験したことのない緊張感の中で日々を過ごし、入学式を迎える。その愛くるしい新入生の様子を見ながら、教育現場に身を置くことに喜びと誇りを感じ、まもなく出会う自身の担任するクラスの子供たちに想いを馳せる。
2020年度の新任教師は、そのような輝かしい春を迎えることができなかった。
本来であれば入学式を迎えることが多い4月7日には、東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県に「緊急事態宣言」が発出された。
このうち、東京、神奈川、大阪にはぼくのゼミの新任教員が赴任していた。
どのような状況に翻弄されているのか、想像するしかなかった。
その後、4月16日には「緊急事態宣言」の対象は全国へと拡大された。
その頃、大学在学中からのゼミのグループLINEで、学生たちは不安な状況、心理を共有している。それらのやりとりについて、本人承諾のもと、貴重な資料としてここに記しながら、コロナ禍の新任教員の実態について迫りたい。
ここで登場するのは、東京都で採用されたN(以下、N東京)、北海道で採用されたS(以下、S北海道)、京都府で採用されたI(以下、I京都)、大阪府で採用されたH(以下、H大阪)、横浜市で採用されたK(以下、横浜K)のぼくのゼミ卒業生5名である。
4月1日の赴任の日。よほど嬉しかったのか、13時に大阪HがグループLINEに、
〇〇市立◇◇小学校に決まりました!
2020年4月1日 pm.1時2分 大阪H
と、投稿した。
13時といえば、おそらく教育委員会で辞令を受け取り、赴任校へ移動している最中ではないだろうか。その高揚感が伝わってくる。
その日の夜半、22時半には京都Iが、「学校の再開は?結局自治体が判断へ」という東京都関連のニュース画像をLINEにのせ、東京Nのことを案じる投稿をした。その後、以下のやりとりが繰り広げられる。
注:( )内は筆者の加筆。
明日、臨時会議あるみたいで、そこでもしかしたら足並み揃えるのかも
2020年4月1日 pm.10時58分 東京N
私ら(たちの学校)、今日(会議)してはる。どうなるんやろな。
2020年4月1日 pm.10時58分 京都I
ほんまに、どうなんねんねやろ···。
2020年4月1日 pm.10時59分 東京N
小学生、(コロナが)出てたなぁ。
2020年4月1日 pm.11時05分 京都I
出てたよなぁ。怖いな···。
2020年4月1日 pm.11時06分東京N
みんな気をつけよ
2020年4月1日 pm.11時08分 京都I
これが、夢の教師生活初日の言葉だ。
赴任直後の高揚感は見られず、おそらく疲れて帰宅したあと、ニュースを目にして不安になっているのだろう。
翌日、ぼくはたまらず新任教師たちにメッセージを送った。
(次回に続く)