「学生の変化」 教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.5

実態調査から見えてくる学生の将来像の変化

2019年11月に、参議院の文教科学委員会調査室が教員採用試験の競争率低下について、その調査結果について報告した。
そこでは、公立学校教員採用選考試験の実施状況について、平成12年のピーク時には13.3倍だった競争率が、平成31年には4.9倍となり、減少傾向が続いていることを指摘した。

教員採用試験における競争率の低下ー処遇改善による人材確保の必要性 川崎祥子(文教科学委員会調査室)2019

ちなみに2020年(令和2年)夏に実施された2021年度の教員採用試験の平均倍はさらに低下を続け、3.6倍になっている。
参議院報告では、教員採用試験の競争率の低下原因として、
(1)教員の大量退職と民間企業の採用動向
(2)教員の多忙化
(3)小学校教員の養成プロセス
の3点を挙げている。
(1)については同報告に、

「近年では、教員養成系大学・学部の出身者の教員就職率も低下しており、教員を志して大学に入学したにもかかわらず、 卒業後は民間企業への就職等、教員以外進路を選択する者も増えている」

とあり、教員離れの実態について述べている。
このことは、ぼく自身も目の当たりにしてきた(現在も)。
そこで、教員養成系学部の大学生を対象に以下2点の質問項目で調査を実施した。

調査時のぼくの関心は、
「どれぐらいの学生が確固として教師を目指しているのか」
ということと、
「迷っている学生の割合とその理由」
だった。
ぼくの勤務する大学でも、参議院報告が示唆するように、教師以外の職業を選択する学生が増えていた。また、途中で進路変更する学生も増えているという実態があった。
このことは、教員養成系の大学にとっては大きな課題である。
ぼくはその実態が知りたかった。結果は図1、2(n=121)のようになった。

この結果から概観すると、2回生までの段階ではまだ教師を志望する学生がもっとも多いということになる。
しかし1、2回生合わせて割合をみると、教員養成学部(小学校)の中で47%となり、すでに半分を切っている。
「すでに」と表現したことには理由がある。「迷っている」と回答した学生は全体の25%で、そのうち「一般企業か教員か」で迷っている学生は73%だった。そしてこの73%の学生は、これまでの経験で言うと、最終的にはそのほとんどが「一般企業」を選択する。
あるいは、「迷っている」という時点で教員養成系学部の「同調圧力」にうまく合わせている学生も多い。
それだけではない。この時点で「教員志望」であっても、その中には3回生あたりで進路を変更し、教師を志すことをやめる学生が出てくる。
これが実態だ。

そしてこのことに対して、残念ながらぼくたち(大学教員、教育者)はあまりにも無力だ。

ここで手をこまねいていると、将来の子供たちの明るい未来を想像できなくなる。
教師は”Nation Builders”であるという言葉もある。
この大切な課題について、続けて探究していこう。

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