「学校教育のいくつかのレビュー 〜講師採用の実態と教員採用の本質〜」 教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.70

今回は、これからの学校・教師のイノベーションのために、学校教育におけるこれまでの常識を、いくつかレビューしてみよう。

「講師」採用の実態

昨日、公立小学校の校長先生と話す機会があったのだが、こんな話を聞いた。

このブログでも述べたように、公立学校の現状として「任期付き教員」、いわゆる講師が多く採用されている。
これは、採用試験に合格できなかったときに、講師として働きながら採用試験に再チャレンジするという流れがあるからだが、今の講師はそれだけではない。

産休や育休の代用講師はこれまでもあったが、今は「病休」教師の代用教員が多くなっているということ。
ここでいう「病休」はその多くが、精神疾患ということだ。

2021年4月に発表された文部科学省の統計(人事行政状況調査)によると、2019年度(令和元年度)の公立学校教職員の精神疾患による病気休職者は5478人だった。
これは、全教職員の0.59%にあたり、3年連続で過去最高を更新している。

このような情報(状況)も、教師を憧れの職業ではなくしているのだろう。
病気になってしまう仕事には誰も就きたくない。
ただ、100人に1人もいない、1000人に6人ほどだから、それをどう解釈するのか、どう報道するのかということだろう。

採用試験に合格できなかった学生などは、10月の発表後すぐに講師登録を行うので、ほとんどの場合4月には講師として学校に赴任する。
そして本人の希望にもよるが、1年間勤めるので中途での採用が難しい。

したがって、とくに突然の「病休」の代用採用は、どうしても「家にいる人」が多くなる。

要するに、退職教員の再雇用ということだ。

昨日話した校長先生は、72歳の男性講師を雇用していると言っていた。
そして驚いたのだが、「学級担任」をしているということだ。

また、突然の人員不足で片っ端から講師としての雇用依頼をするが、退職教員が雇用を引き受けない理由が近年、変わってきたという。
それは、

「パソコンができない」

ということだ。

GIGAスクール構想の一環で、1人1台端末が促進された。
それは退職教員も知っていて、そこに不安を感じて講師を引き受けない、という状況が少なからずあるようだ。

だがこれは、本質的な問題ではない。
パソコンを扱えないのであれば、学校で勤めることはできないのだから仕方ない話だ。
それよりも、その年代の退職教員に講師として依頼しなければならない状況がおかしい。

では、どうすればいいのか。

教員採用の「営業努力」

これからの学校・教師のイノベーションのために勝手なことを言うが、各自治体は必要な定数を採用すればいい。

それでは優秀な人材を確保できない、と言う声が聞こえてきそうだ。
だが、各自治体の「営業努力」が足りないからだろう。

どこの企業が、

「私たちの会社には優秀な人材が集まらない。それは社会が不景気だからだ」

などと言うだろう。
優秀な人材がほしければ、各自治体が「営業努力」をして、優秀な学生が「ここの教師になりたい」と思えるようにすることだ。

教員採用試験の倍率が低く、なかなか望む人材が集まらないある県が、全国で一番早く採用試験を実施するようになった。
教員採用試験は7月に始まる、というのが定説になっていたが、それを打ち破り、6月に採用試験を実施した。

当初は各大学が、本命の自治体を受験する前の「模擬試験」的にその県を使い、受験した。
結果的に受験者数は増えたが、2次試験は受験しないで離れていくなど、苦労はあったようだ。
だが結果的に現在は、全国で一番倍率の高い県になった。
その対策をする前に比べると、かなり採用実態に変化があったのではないだろうか。

これもひとつの営業努力だ。

大阪市は、初任の教師の給与が全国でもっとも高い。
そうやって優秀な人材を得ようと努力し、対策している。

全国の自治体が、このような「営業努力」を打ち出し、優秀な教師を得るための競争をすれば、今の停滞した教員採用の状況が変わるのではないだろうか。

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