「不登校の要因」 教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.60

令和2年度(2021年度)の小・中学校における不登校児童・生徒数は196,127人(前年度は181,272人)で、1000人あたりにすると20.5人(前年度は18.8人)であり、過去最多を更新している(8年連続更新中)。

また、学年別に見ると、2021年度は中学校2年生が一番多く、次に中3、中1と続き、そこから小学校6年生、5年生、と低年齢に降りていく。

このことは、不登校を誘発する要因に思春期などの成長過程を想起するが、どうなのだろう。

今回は、「不登校の要因」について見ていこう。

不登校調査の項目について

現在の不登校調査における要因については、3つのカテゴリーと14項目に分けられている。

学校に関わる状況
いじめ
いじめを除く友人関係をめぐる問題
教職員との関係をめぐる問題
学業の不振
進路に係る不安
クラブ活動、部活動等への不適応
学校の決まり等をめぐる問題
入学、転編入学、進級時の不適応

家庭にかかる状況
家庭の生活環境の急激な変化
親子の関わり方
家庭内の不和

本人に係る状況
生活リズムの乱れ、あそび、非行
無気力、不安
該当なし

以上の項目となるが、さて、どの項目がもっとも多いのか、想像してみてほしい。
そして、その想像と実態との乖離が、不登校の解決を遠ざけているかもしれない。

不登校の要因の実態

答え合わせをしてみよう。
小学校・中学校における不登校の要因の内訳(多い順)は、以下のようになる。

小学校
・無気力、不安(46.3%)
・親子の関わり方(14.6%)
・生活リズムの乱れ、あそび、非行(14.0%)
いじめを除く友人関係をめぐる問題(6.7%)
・該当なし(4.9%)
・家庭の生活環境の急激な変化(3.8%)
・学業の不振(3.2%)
・教職員との関係をめぐる問題(1.9%)
・入学、転編入学、進級時の不適応(1.8%)
・家庭内の不和(1.6%)
・学校の決まり等をめぐる問題(0.7%)
・いじめ(0.3%)
・進路に係る不安(0.2%)
・クラブ活動、部活動等への不適応(0.0%)

中学校
・無気力、不安(47.1%)
・いじめを除く友人関係をめぐる問題(12.5%)
・生活リズムの乱れ、あそび、非行(11.0%)
・学業の不振(6.5%)
・親子の関わり方(6.2%)
・該当なし(4.8%)
・入学、転編入学、進級時の不適応(4.1%)
・家庭の生活環境の急激な変化(2.5%)
・家庭内の不和(1.8%)
・進路に係る不安(1.1%)
・教職員との関係をめぐる問題(0.9%)
・学校の決まり等をめぐる問題(0.8%)
・クラブ活動、部活動等への不適応(0.6%)
・いじめ(0.2%)

以上の結果について検討してみよう。

小学校も中学校も、不登校のもっとも大きな要因は「無気力、不安」だった。
「無気力」が原因で不登校になっている児童・生徒といったとき、どのような児童生徒を思い浮かべるだろう。
家でダラダラと、ゲームばかりしている姿だろうか。

LH;Seligman&Maier(1967)は、「自分の行為と結果が随伴していない」と児童生徒が認知した時に、反応性うつのモデルとされる学習性無力感を引き起こすと指摘している。

このような「無気力タイプ」で不登校になっている児童生徒には、必ずそうなった要因がある。
けっして、「ダメな子供達」と括ってしまってはいけないだろう。

教育職にあると、たとえば30人の学級の担任をしているとすると、そこには30人の多様な子供たちがいる。
30人の中には、どうしても、何を言っても「無気力」な子供なんかがいるものだ。
すると担任は、「あの子は無気力な子供だ」という一つのレッテルを貼ってしまいがちだ。
そうしなければ、30人の子供を把握できない。
しかし、その「無気力」の要因を探そうとする意識と行動は、「教育者」として必要な行為だろう。
そうでなければ、30人の子供たちを色分けし、それぞれをステレオタイプに分類し、レッテルを貼って相手をするだけであれば、教師ではなくても誰にでもできる。

教師はプロフェッショナルとして、子供が抱えている「無気力」という壁を学ばなければならない。
それが、教師にとって必要な研修というものだろう。
板書の研修や授業方法のノウハウなんていつだっていい。

もう少し、「不登校の要因」について探究していこう。

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