カンボジアでのひったくり被害で気づいたこと

2023年12月23日から年明けの2024年1月1日は15回目のカンボジア、プノンペンだった。

そこで、人生で初めての「ひったくり」被害に遭った。

プノンペンで誕生日を迎えたのだが、まず現地でお世話になっているカンボジアメコン大学(CMU)でサプライズのお祝いをしていただいた。
どうやら私の学生が企画してくれたようで、とても嬉しかった。

また、現地在住日本人の友人たちと食事会があり、そこでも突然、バースデーケーキが運ばれてきて、感激の夜を過ごした。

その帰り道、学生たちとトゥクトゥクに乗り、ホテルに向かっているところだった。
ポケットからスマートフォンを出し、メッセージを確認している時だった。

なんの感覚もなく、すっぽりと手からスマートフォンが抜き取られた。

その時の感覚は、(やられた!)というもので、すぐに声を上げた。
トゥクトゥクのドライバーは一瞬スピードを上げたが、すぐに諦めた。
私は、すごいスピードで走り去っていく若い2人の背中をただ見ているしかなかった。

これまで何回もプノンペンに来て、どこかで慢心があったのだろう。
それでも、あそこまで巧妙だとは思っていなかった。
奪い取られた感覚はなく、スッと消えたという表現の方が適切だった。
翌日には解体され、新たな機種となって店頭に並ぶらしい。
急に電話を失った喪失感もあったが、走り去る二人乗りのバイクを見ながら物悲しさにも襲われた。
(こんなことを仕事にしているのか)
そんなふうに、この大好きな国のひとつの実態を目の当たりにした切なさがあった。

そこからがカンボジアらしかった。
この件を何人かの現地の人に話したが、みんな揃って反応が同じだった。

まず、Oh~と悲しそうな表情をする。
その後すぐに、こんな風に言う。

It means that bad things go out and good things come in.
Happy Birthday!
(悪いものが出ていって、いいものが入ってくると言うこと。お誕生日の日に、おめでとう!)

不思議なことに、ラッキーなことと思えてくる。

また、こんなことを言う学生がいた。

My country is sorry.
(私の国が、ごめんなさい)

これは、ひったくりが多い自分たちの国のことを卑下し、残念に思っての言葉だ。
しかし、その言葉を聞いて思った。

私たちの国は、カンボジアにきてどれだけ悪いことをしているのか。
多数の、いや、もしかしたら無数の詐欺グループが潜伏し、プノンペンのホテルを拠点にしている。
そのため、現地で暮らす日本人のビザの更新にも影響が出ているそうだ。

こちらこそ、My country is sorry.
と思った。

今、日本に帰国した。
さっそく、新たなスマートフォンを手に入れよう。

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