学校における危機管理とは-3.「学校管理下」における事故等の状況

ここで、学校管理下における事故等の状況について概観する。
ただし、採用する資料は2018年度以前のものとする。
なぜなら、2019年12月以降、Covid-19の世界的パンデミックにより、学校管理下における状況そのものが大きく変容した。
ひとつは2020年3月から実施された全国一斉学校休業により6月までは学校そのものが稼業していない状況となり、学校管理下という状況そのものが変容したことが挙げられる。
また、学校が再開してから2022年現在においても、児童生徒の感染拡大等によって学級閉鎖等の措置が取られるなど、2018年以前の学校教育活動とは異なった様相を見せている。
この先の学校管理下における学校教育がどのように変わっていくのか、2019年以前へと戻るのかという議論については他の研究に譲り、ここではCovid-19による影響を除外した状況での学校管理下における事故等を概観する。

まず、学校管理下における児童生徒の死亡について、独立行政法人日本スポーツ振興センターによる「学校管理下の災害」の2018年度版から検討する。

学校の管理下の死亡の発生件数(平成30年度、給付対象事例)によると、小学校では13件、中学校では26件、高等学校では28件の死亡が発生し、学校全体では74件の死亡が発生している。
男女別では男子が53件、女子が21件であり、男子の死亡件数が女子の約2.5倍となっている。
また、死因別では「突然死」(突心臓系、突中枢神経系、突大血管系)がもっとも多く、25件を数える。

次に多いものが「窒息死」(溺死を除く)であり、15件を数え、そのうち中学校が10件を占める。
そして「全身打撲」「頭部外傷」と続く。場合別を検討すると、「各教科等」で8件を数え、そのうち5件が体育の時間に発生している。

どうしても感覚的には体育の時間の死亡事故が想起されるが、注目するのは「通学中」の場合である。
体育の時間に発生した死亡事故は5件であり、死亡件数全体の約7%を占めているが、通学中の死亡件数は16件であり、全体の約22%を占めている。
通学中における死亡の事例では、「通学中、地震が発生し、学校沿いの通学路において、プール横のブロック塀が長さ40mにわたって歩道側に倒壊し、本児童はその下敷きになった。緊急搬送されたが、同日死亡した」(小学校4年生、女子)が事例報告されている。
これは2018年6月18日に発生した大阪北部地震による被害である。
この地震は午前7時58分に発生しており、当児童は学校への登校中に被害に遭ったもので、学校管理下における死亡事故である。
したがってこの件については、当該児童は学校に行くためにその道を歩き、その道を登校路として学校が認めていたことになる。
学校がその登校路の安全性を確認していたかということが問われる。

同様に、学校管理下における登校ルートに関連して子供が命を失った事故がある。
それは、「交通事故」だ。

2013年4月。
京都府亀岡市で、無免許の少年が運転する軽自動車が、登校中の児童の列に突入し、10人がはねられ、3人が死亡する事故が発生した。
この事故の争点では、運転した少年が無免許であったことや居眠り運転であったことが挙げられた。
その点については司法が判断する範疇だったが、忘れてはならないのはそこに「歩道がなかった」ことである。
そして、学校がその管理下において「そこを登校路として認識していたこと」である。

その教訓は生かされなかった。

2021年6月。
千葉県で同じような交通事故が発生し、登校中の児童が死亡、重傷を負う事故が発生した。
この事故を起こしたドライバーからはアルコールが検知されたが、それはやはり司法の範疇である。
だがもう一点、この登校路に「歩道はなかった」。
そして学校管理下において、そこは登校路として認識されていたのだ。

無免許運転や飲酒運転は司法によって裁かれるが、登校路の適切性については司法の範疇に及ばない。
それだけに、学校が「学校管理下」の意味と責務を重視する必要性がある。
過去の子供の命が、その教訓を教えてくれている。

(次回へ続く)

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