「学校支援ボランティアの実態調査から」 教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.69
前回、No.68では学校支援ボランティアについて、過去の研究論文から考えてみた。
そこで今回は、実際に学生にアンケート調査からその実態に迫りたい。
調査は、小学校の教職課程科目を受講する3回生の学生に実施した(n=46)。
学校支援ボランティアに関するアンケート
まず一つもの問いで、教職志望かそうではないかを分ける必要があるので、このような質問をした。
すると、以下の結果を得た。
およそ半数強の学生が教職志望であることがわかった。
では、どれくらいの学生が、学校支援ボランティアに参画したのだろう。
(図2)から、80%以上の学生が学校支援ボランティアに参画した経験がある。
この2つのデータから、ひとつの様相が見えてくる。
(図2)の学校支援ボランティア経験は2回生のときの話だ。
この時点では3回生の46人中、39人が学校支援ボランティアに参画している。
これらの学生は、この時点では「教職志望」であった可能性が高い。
そして(図1)を見ると、3回生の11月段階で教職志望学生は58.7%になっている。
数にすると27人となる。
と言うことは、2回生の1年間を経て、39人のうち12人が、教職志望から変更したことになる。
もちろん、学校支援ボランティアへの参画が全ての要因ではないとは思うが、大きな要因である可能性は否めない。
では、学生たちはどのような学校支援ボランティアを経験したのか、見てみよう。
ここからは、学校支援ボランティアに参画した学生だけが回答している(n=37)。
(図3)から、そのほとんどが授業アシスタントの活動を行なっている。
そのほかには「休み時間に子供と遊ぶ」が多かったが、他にも「畑の耕し作業」「運動場の草引き」などの環境整備にも従事したようだ。
では、このボランティア活動は学生にとってどのような影響があったのだろう。
学校支援ボランティアが教職志望の思いを強くしたのか。
それとも逆に作用したのか。
(図4)では、「とてもそう思う」「そう思う」が合わせて59%であり、数にして37人中22人ということになる。
と言うことは、37人中15人は、学校支援ボランティアによって思わしくない影響を受けたことになる。
類似した項目として、学校支援ボランティアへの参画意欲はどのようなものだったのだろうか。
学校支援ボランティアに意欲的に参画できたのは67.5%の学生で、37人中25人となる。
12人はそうでもなく、とくに7人の学生は「そう思わない」「まったくそう思わない」と回答した。
「いやいや」学校支援ボランティアに参画していた実態があったようだ。
学校支援ボランティアを有効に活用する方法
学校支援ボランティアに参画して「よかった」と言う学生の声には、以下のようになる。
子どもと関わることができ、より教員になりたいという気持ちが強くなった。また、現場の先生の授業を見て、自分も真似したい点が多く見つかり参考になる。
学校現場に出てみたいとわからない児童の様子や、教師の方々の苦労を間近で見ることができ、教師という仕事のイメージを掴めるきっかけになった。
大学の講義では知ることの出来ない「現場の実態」を知ることが出来た。知識だけをたくさん詰め込んでも現場では想定通りのことが起きるとは限らず、臨機応変に対応することが求められる。それを感じるためにはこの経験を積んでいて良かった。
子どもたちと多くの時間を過ごすことで深い思い出ができた。1年間での成長が早くすごいと感じた。
とてもいい学びを得ていることがわかる。
この記述をした学生たちは、きっとブレることなく教職に就いていくことだろう。
一方で、学校支援ボランティアに参画してよかったかというと「そうは思わない」と回答した学生は、以下のように記述した。
クラスが学級崩壊しそうなくらい荒れていて たち歩いている児童や授業放棄している児童を1人で担当していたから。
コロナ禍ということもあり、子どもとの関わる時間が取れなかったのかもしれないが、一日中草抜きという日もあったりし、実践的な学びにはならなかったため。
これらの調査の実態から、学校支援ボランティアの有効活用についていくつかの提案が可能だ。
まず、参加することは「学生の意思に任せる」と言うことだ。
ぼくが勤務する大学でも、教職志望学生は学校支援ボランティアに関連する科目を強制的に履修させ、1年間の学校支援ボランティアを課す。
この意図は、おそらく教職志望学生を「確保」することなのだろうが、調査結果から言うと、その学生を何人か手放している。
自身の意思で参画し、しんどくなれば自らの判断でいったん離れることができるようにするべきだろう。
学校教育現場の、負の部分を見続けることが、果たして教師としての資質を強化するのだろうか。
もう一つは、科目として履修させるのであれば、常に大学の教員がサポーターとして学生を支えることだ。
ボランティアに行った翌日はアウトプットの時間を取り、学生と話し合う。
そこには、ショッキングな体験や不安、不信感などが出てくるかもしれない。
それを聞き、柔らかにアドバイスすることが必要だ。
「学校現場に行けば学びがある」と言う妄信で、有望な学生を教職から離れさせないようにすることが、これからの教員養成において必要な対策の一つではないだろうか。