「学生が教育現場で学ぶことの有効性について」 教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.67

最終章「学校・教師のイノベーション」に向けての第1弾として、前回No.66では教員養成における大学の授業の有効性、有用性について述べた。

今回は、教員養成段階における実習について考えていこう。

「学校支援ボランティア」とは

教員養成の課程において、教育実習は必修であることは誰もが知っている。
幼稚園、小学校、中学校は4週間程度、高等学校は2週間程度で実施される。

これらは大学3回生で実施されるが、2010年から新たに、4回生の後期で履修する「教職実践演習」が創設された。
この科目は、4年間の学びの集大成とされ、学んできた教職課程が有機的に統合され、教育現場で実践的に発揮されることを目的としたものだ。

だがその創設の意図としては、学生から教師への架け橋の意味が強いだろう。

多く場合、教員採用試験は10月で終わる。
そこから学生は、アルバイトに精をだし、残された大学生活を謳歌し、卒業旅行を楽しむだろう。
というのも、教員採用試験に取り組む過程はとても長い。
周囲の学生が早々に企業等への就職を決めていく中、4回生の6月くらいから採用試験に取り組み、10月の発表まで就職が決まらない不安と闘う。

そして3月に大学を卒業し、4月1日に、辞令を受け取って赴任先の学校に足を踏み入れる。
ここでひとりの新任教師が誕生する。

多くの職業では、ここからしばらくは研修期間などが設けられるだろう。
教師も新任研修があるが、それでも4月8日には担任として教壇に立ち、学級運営が始まる。

ここでは、だれも助けてはくれない。
怒涛の毎日が始まる。

そのような状況によりよく対応できるように、4回生の後期に教職実践演習が設定されたと言える。

これが、大学の出口、教師への入り口にもっとも近い学修機会と言えるだろう。

一方で、2週間〜4週間の教育実習だけが教職に就く前に学校教育現場に触れる唯一の機会であり、それで足りるのか、という議論があった。

そこで多くの大学では、教育実習の前の2回生段階で「学校支援ボランティア」に学生を行かせている。

学校支援ボランティアとは、1997年の教育改革プログラムの一環で、地域人材を学校教育で活用しようという目的が大きかった。
導入当初は各学校で地域の人材を名簿にし、ゲストティーチャーとしていろいろな授業で活躍してもらった。

その学校支援ボランティアの一環として、とくに教職を志す大学生が「授業サポート」などで参画するようになってきた。

たとえばある自治体では、こんなプロモーションを展開している。

「将来,先生になりたい」「子どもが好き」「自分の特技・長所を生かして子どもと関わってみたい」…。そんな学生の皆さん,〇〇市教育委員会では,学生ボランティアを募集しています。市の学校や幼稚園では,年間約2,000名の学生ボランティアが,日々の学級活動や部活動などを支えています。〇〇市の子どもたちと共に学びあいましょう。学生の間にしかできない経験が,あなたを成長させてくれますよ!

このシステムを、教員養成型の大学(学部)が活用するようになった。

ある大学の方法だが、2回生の段階の演習科目で「学校支援ボランティア」への参加を必修化し、単位認定する科目を作った。
2回生の学生は、その科目がある曜日は1日、学校支援ボランティアに行き、行った「証拠」に校長先生の印をもらってくる。
学校支援ボランティアに休めば「欠席」になるというシステムだ。

教職を目指す学生は、「必修」ではなくても「履修」せざるを得ない状況になっている(同調圧力)。

大切なのは、その結果、学生たちの中で「教師としての資質形成」になっているのか。
そして教職への「夢を育んでいる」のか、ということだ。

ぼくがこれまで、そのような学生たちを見て、聞いてきたところから言うと、

「教職を志望する学生の学校支援ボランティアへの参画は、やめたほうがいい」

と言うことだ。

そのわけについて、次回、話していこう。

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