「TALIS2013の検討 日本の教師の多忙感」教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.19

このブログでは、学校や子供の安全、教師教育などを取り扱っているが、このシリーズ「教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか」は、ぼくがブログを始めるトリガーになったテーマだ。

ただし、このタイトルについては逆説的に捉えてほしい。
ぼくは、教師という職業が「憧れの職業」になることを願って書いている。


では、ここ最近は更新できていなかったこのテーマに戻ってみよう。

このシリーズの前回投稿No.18「日本型学校教育の成果」では、日本型学校教育の国際的な評価について書き、また、国際的に見て日本の教員の能力は高く、また報酬も高水準であることについて触れてきた(あくまでも国際的に見て)。

だが、これは一般論とイメージであり、このイメージの仕事内容に対して日本の教師が満足しているかといえば、そうではないだろう。このことについては、次章でOECDによる国際教員指導環境調査TALIS2018を整理、分析して探ってみよう、と結んだ。

では、TALIS2018を検討していこう。

TALIS2013におけるセンセーショナリズム

2013年に実施された第2回調査、TALIS2013に日本は初めて参加した。


TALIS(Teaching and Learning International Survey:国際教員指導環境調査)はOECDによって2008年から実施された。
学校の学習環境と教員の勤務環境に焦点をあてた国際調査であり、TALIS2008では24カ国( 2008 TALIS Technical Report https://www.oecd.org/education/school/44978960.pdf)TALIS2013には34カ国、TALIS2018には48カ国が参加している。
 日本が初めて参加したTALIS2013の結果はある種のセンセーショナリズムを持って解釈され、これを機に日本の教師の「多忙感」が印象付けられるようになった。

とくに注目された結果が、「教員の仕事時間」の項目であり、日本は53.9時間(通常の1週間において)で参加国中でトップの結果を示した(参加国平均38.3時間)。
また、同じく「教員の仕事時間」における詳細について、「学校運営業務への参画に使った時間」は3.0時間で参加国中3位(1位はマレーシアの5.0時間、参加国平均は1.6時間)だった。
また、「一般的事務業務(教員として行う連絡事務、書類作成その他の事務業務を含む)に使った時間」は5.5時間で参加国中2位を示した(1位はマレーシアの5.7時間、参加国平均2.9時間)。
そして、当時もっとも話題になった結果であり、現在においても課題として取り上げられている「課外活動の指導」が7.7時間で参加国中1位を示し、参加国平均2.1時間に比して断然多くの時間を示す結果となった。

これらの結果から、日本の教師は他国に比べて「多忙だ」という解釈につながっていった。
しかし、他の結果に目を向けたとき、「保護者との連絡や連携に使った時間」は1.3時間であり、参加国平均の1.6時間を下回っている。

日本の教師の「多忙感」の中で理由として挙げられるものに「保護者対応」というものは必ず挙げられていることを考えると、この結果との因果関係に違和感を感じる。
このことは、「多忙感」と「多忙化」は似ていながら別物であるという認識の必要性を我々に示唆しているのではないだろうか。

では、次回はそれから5年後に調査された、TALIS2018の結果を検討してみよう。

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