災害時における教師たちのノブレス・オブリージュ ~そこにある「使命感」と「多忙感」~ 12 避難所の開設と運営の実態②

避難所開設期の実態

前回(8月5日「避難所の開設と運営の実態①」)では、熊本地震における避難所の開設(初期段階)において、教師が果たした役割について述べた。

ここで時系列を遡るが、地震発生の初動期における避難所開設に視点を当ててみたい。
過去の震災において、避難所の開設時における種々の課題が報告されている。
阪神淡路大震災では、地震が発生したのが午前5時46分という時間帯に発生したこともあり、避難所となった学校などは開錠されていなかった。
したがって、教員が駆けつけて開錠した例や、それ以前に住民が学校のガラスを割って侵入したという例が報告された。

熊本地震では、前震は21時26分という夜の時間帯に発生した。
教員はほとんど帰宅していただろう。
しかし、避難所として指定されている学校には、次々と避難者がやってきた。
そこで、校長の指示を受けて教頭が開錠した例や、校内に残っていた教職員が直ちに避難所を開設したという例が報告されている。

広安西小学校の掲示板。 地震発生から1週間後の夜中。教師たちが輪番で夜間パトロールをしていたことが示される画像。

いずれにしても、学校が避難所となる場合、そこを開錠して避難所を開設し、初動段階で被災者を受け入れ、運営を進めるのは教師であることが予想されるのである。
しかし、各自治体の避難所マニュアルにおいて、避難所を開設する役割として、教師、あるいは管理職であるという記載は見当たらず、内閣府の「避難所運営ガイドライン」にもあるように、その役割は学校の施設管理者となっている。
学校の施設管理者は教育委員会だ(学校施設の確保に関する政令)。
したがって、災害時に学校の避難所を開錠するのは教育委員会であるという、非現実的でおよそ有効だとは言えないマニュアルとなっていることに、改めて着目する必要があるのではないだろうか。

(次回へと続く)

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