教師と社会② 「教師の不祥事と教員志望者数に関連はあるのか」教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか No.12
「憧れ」と不祥事の関連
前回、「教師」カテゴリーの「教師はなぜ、憧れの職業ではなくなったのか」No.11で、教師の不祥事について取り上げた。
とくに神戸市で発生した「教師いじめ」事件を取り上げ、加害者の処遇(のぬるさ)と教職イメージの関連いついて言及を始めたところだ。
そこで今回は、教師の不祥事の実態と教職志望者数の関連について考えてみたい。
脇(2008)は「指導力不足教員」認定制度の成立過程に関する研究のなかで、
「指導力が不足する教員の教壇からの排除を最初に政策課題として取り上げたのは、臨時教育審議会(以下、臨教審)第3部会である。その背景として、新聞における教員の不祥事報道やその続報の件数が1983年に急激に増加し、教師の質について世間の危機感が高まったことが挙げられる」
と述べている( 脇奈七 2008 「中央における教育政策実現の決定構造メカニズムの考察 -「指導力不足教員」認定制度の政策形成過程をもとに- 」京都大学 教育行財政論叢 11巻 pp.81-97)。
この視点で教師の不祥事について考えるときに、「不祥事の実数の変遷」と教師という職業への憧れを如実に示す「教員採用の受験者数、採用者数、倍率の変遷」という三つの要素について考察してみたい。
まず「不祥事の実数の変遷」である。
これは、先の文部科学省の統計「教育職員の懲戒処分の状況等」を利用すればよい。
このデータをいくつかの分類でグラフにしてみよう。
図3を見たとき、2013年の体罰が非常に多くなっているが、これは突然増加したというわけではなく、2012年に体罰の状況調査を実施し、2013年にまとめて懲戒処分を行なった結果によるものという見方が適切だ。
そして、交通事故・違反による懲戒処分は年々減少しているようだが、その反面、わいせつ行為等による懲戒処分は年々増加していることがわかる。
次に、教員採用試験の受験者の変遷についてみてみよう。倍率は採用側の採用人数に左右されるため、受験者数をみてみたい(図4)。
図4を見ると、2013年をピークに年々受験者数は減少し、2018年にはピークから20000人ほど減少している。
しかしこれは、大学を卒業する人口の減少と比較しなければ、それが顕著な減少と言えるかはわからない。
だが、同じく図4の「採用者数」に関しては、年々わずかながら増加傾向にある。
したがって、実数そのもので比較、分析するには他にも関連する要素に着目する必要があるが、傾向として「採用者数は増えているが受験者数は減っている」ことは言えるようだ。
倍率の変遷についてみると、さらにそのことが実証される(図5)。
では、これらの要素に因果関係、あるいは相関関係はあるのだろうか。
教師の懲戒処分がどのように推移しているか、そこに関心を持ち、教師という職業の評価をしながら将来の選択を考慮している学生は少ないだろう。
そのような情報は常に、メディアからぼくたちの元に届く。
そこで次回は、メディアの影響について考察してみよう。
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