カンボジア研修とコロナⅤ スラム炊き出しプログラム

「違和感」から生まれたプログラム

ぼくたちのカンボジア研修は、例年「ストゥーミンチェイ地区」のスラムを訪問する。
ここで出会ったトナン少年が、ぼくがカンボジアと言う国が大好きになったきっかけのひとつだが、トナンについては別の回に紹介したい。

3つのプログラム以前の研修では、ストゥーミンチェイのスラムを訪問し、大学が準備した大量のお菓子をスラムの子供達に配る(まるで戦時中や、コロナ禍の配給のように)取り組みをしていた。
それはそれで、価値はあった。
日本の学生にとって、未知の「スラム」で子供たちと交流する。
裸足で、あるいは裸で舗装されていない集落を走り回る子供達に、最初はおずおずとコミュニケーションをとる学生たち。
しかし、さすがに教員志望だ。
10分もすると、学生たちはスラムの子供たちを抱きしめている。

スラムの子供と学生。
こっちへおいでよ。
学生による「配給」の列に並ぶ、スラムの子供たち

そしてある程度交流した後、学生たちは配給するお菓子の袋を手にする。
すると、とたんにスラムの子供たちは列を作る。
学生たちは、笑顔で子供達にお菓子を配る。
何の苦労もせず、大学が用意したお菓子を。
そこに、ぼくはずっと違和感を持っていた。


自分たちの力で、試行錯誤しながら、スラムの子供たちの本物の笑顔をみたい。
そして考案したのが、「スラム炊き出しプログラム」だ。
このプログラムでは、学生たちが日本での事前学習で、色々と試行錯誤しながら「スラムの子供たちが喜ぶメニュー」を考える。
最初の頃は「日本の発想」だった。
「たこ焼き」「うどん」「ピッツァ」・・・。

ある年のメニューは「カレースープ春雨」だった。
カレーはカンボジアでもよく食されるメニュー。
腹持ちを良くするために麺類を入れたい。
カンボジアでは春雨が一般的だが、カレースープと合う春雨は?
現地のスーパーに何度も赴き、試行錯誤して作り上げた炊き出しプログラム。
朝から市場で豚肉、野菜を買い、切って仕込みを作る。
これだと選別した春雨をほぐす。
ガスとフライパン、大きな鍋をスラムに運ぶ。
そして調理する。
鼻腔を刺激するカレースープ春雨の匂いに、近辺のスラムの子供たち、大人が集まってくる。
200人分の調理はあっという間になくなった。
学生たちは、言いようのない疲労感に包まれている。
その中で、1人の子供が叫んだ。

「おいしい! もう一杯だけで終わるから!」

「この1杯で終わるから!」 スラムは笑顔に包まれた。

スラムが笑いに包まれた。
学生たちは、日本では絶対に得られない充実した笑顔を浮かべていた。

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